絶滅に瀕しているオグラセンノウSilene kiusiana (Makino) H. Ohashi et H. Nakai は半自然草原に生育する大陸系遺存植物である。本研究ではオグラセンノウの種子発芽特性を明らかにした。低温湿層処理(無処理,15日,30日)を行った種子を用いた段階温度法による種子発芽試験の結果,温度下降系は温度上昇系と比較して低い発芽率を示した。このことから本種の種子は短期間の高温環境下で二次休眠が誘導されたと考えられる。異なる光条件(暗黒区,光量子束密度30,60,150 µmol m-2 s-1)の発芽試験において,本種は光発芽性を持たないことが明らかになった。また生育地の種子結実・散布期の温度環境29/14℃(オグラセンノウの生育地8・9月期の最高・最低平均気温)の変温条件と変温条件の平均温度21.5℃の恒温条件の発芽試験の結果,本種の種子は変温要求性をもつと考えられる。このことから本種の種子は地表面付近においては結実後の当年に発芽できると考えられる。本種の種子寿命は不明であるが埋土された種子は永続的埋土種子集団を形成すると考えられる。